2 牌理の概要

2.1 パーツ概要

パーツ分けをするにはまずパーツにどのようなものがあるか把握する必要がある。パーツには大きく分けて次の五種類に分けられる。

(1)孤立牌(ターツ候補)
1枚からなるパーツで、一手で単独ターツを形成する。シュンツを形成しない字牌(東南西北白発中)と、シュンツを形成する数牌(1〜9)に分けられる。字牌は更に客風牌場風牌自風牌三元牌に分けられる。数牌は更に老頭牌(1・9牌)と中張牌(2〜8)に分けられる。字牌と老頭牌を合わせてヤオチュウ牌と言う。また、中張牌のうち、3・7牌を尖牌、5を心牌と言うことがある。
(2)単独ターツ
2枚からなるパーツで、一手で面子を形成する。ペンチャンターツ一二)、外カンチャンターツ一三)、内カンチャンターツ三五)、トイツ一一)、リャンメンターツ三四)がある。面子になる牌が4枚以下のものを愚形ターツ、5枚以上のものを良形ターツと言う
(3)複合ターツ
単独ターツに1枚加えた3枚からなるパーツで、一手で面子を形成する。リャンメンターツに1枚加わったパーツにリャンメントイツ三三四)。愚形ターツに1枚加わったパーツにペンチャントイツ一一二)、外カンチャントイツ一一三)、内カンチャントイツ三三五)、リャンカン三五七)等がある。前者をリャンメン複合ターツ、後者を愚形複合ターツと呼ぶ
(4)雀頭
同種の2枚からなる。1つめの(単独)トイツの形を雀頭として扱う。トイツとして扱われるのは2つめから。
(5)面子
3枚からなる。シュンツ一二三)、コーツ一一一カンツ一一一一){既にカンされている場合に限る} に分けられる。カンツはコーツでもある。

2.2 パーツ分け

原則、面子手のシャンテン数(テンパイまでに必要な最短手数)を最小にし、取り分けたパーツの価値が最も高くなるように分ける。

  • 面子→雀頭→ターツ→孤立牌の順で取り出す。但し、一三四四五七(1面子の代わりに雀頭かターツで3パーツ取れる)や二四四五(他に雀頭が無い場合、1雀頭の代わりにターツで2パーツ取れる)等の形があり、前者の取り出し方だと面子とターツが合わせて3パーツ以下の手の場合、後者の取り出し方の方がシャンテン数が小さくなる。
  • 複数のパーツが複合していて複数の分け方が存在する場合は、残るターツや浮き牌に明確な優劣があれば残るパーツが強いように分ける(一二三四五なら一二三四五でなく一二三四五のように、但しペンチャンで取ると符ハネで打点が上がるケースもあるので、前者のような分け方もできることは認識されたい)。明確な優劣がつけられないものは、複数の分け方ができるものとみなす。できればパーツ同士が複合して一つになったものとして、パーツ分けしなくても受け入れを認識できるようにしておく。

2.3 シャンテン数、面子候補数把握

シャンテン数

テンパイまでに必要な最短の手数をシャンテン数と言う。

面子手のシャンテン数
分けたパーツ(面子とターツは合わせて4つまで)を下の表に当てはめる。(右側にある→)-1 の値が面子手のシャンテン数である。
 弧→搭→面
 弧→搭→面
 弧→搭→面
 弧→搭→面
 弧→雀
例えば、1面子2ターツ(雀頭無し)の手なら、
 弧→搭→○
 弧→○
 弧→○
 ○
 ○
となり、右側のは計5つなので4シャンテンである。
七対子のシャンテン数
6-(2枚使いの種類数) か、(3枚使いの種類数)+2・(4枚使いの種類数) のうち、値が大きい方。
国士無双のシャンテン数
ヤオチュウ牌のトイツが有る場合は、12-(ヤオチュウ牌種)。無い場合は13-(ヤオチュウ牌種)。

これらの3つのうち最も値が小さいものが手牌のシャンテン数となる。

面子候補数

面子とターツを合わせて面子候補と呼ぶ。

(面子候補数)
<4 のとき面子候補不足
=4 のとき面子候補充足
>4 のとき面子候補過多
と呼ぶ

2.4 基本牌理

七対子、国士無双を除き、和了形は四面子一雀頭である。よって和了を考える場合、雀頭(雀頭候補が無くなる場合)と面子には原則手をつけない(例外は手役絡み、面子を落として雀頭ができる場合)ので、打牌選択は、@孤立牌を切るA単独ターツを落とすB複合ターツを単独ターツまたは雀頭に固定するの三つに分けられる。

同種パーツの比較法

上の選択@AB同士を比較するときは、次のようにして打牌選択を行う。尚、ここでの価値とは、速度 (和了率)、攻撃力(打点)、守備力(放銃率と放銃素点の低さ)の三つの指標を考慮したものである。

選択1:最も価値が低い孤立牌を切る
選択2:最も価値が低いターツを、残る孤立牌の価値が高くなる方から切る
選択3:切ることによる価値の減少が小さく、残るターツの価値が高くなるように切る(残るのが雀頭の時は前者のみを考慮する)

同種パーツの優先順位(基本)

客風<老頭牌<役牌<2・8牌<3〜7牌(厳密には、5だけ内カンチャンを2種作るので僅かに価値が高い)
※字牌に関しては他の手牌によって価値が大きく変動するが、基本は上の優先順位に従って打てばよい。

ペンチャン<外カンチャン<内カンチャン<<リャンメン(リャンメンと他のターツの差は、他のターツ同士の差より遥かに大きい)
※トイツに関しては愚形ターツと同程度で、他の手牌やリャンメンのなりやすさで若干変動する。
※役牌トイツはリャンメンと同程度(テンパイに遠い段階ではそれ以上)、客風トイツはテンパイ時の待ちとしてはリャンメンに匹敵する。

愚形単独ターツ<愚形複合ターツ<リャンメン<リャンメン複合ターツ(リャンカン同士はリャンメンへの変化から 135・246<357)
※愚形複合ターツは、面子ができる枚数はリャンメンと同等であるが、複合ターツを単独ターツに固定せざるを得なくなった時(テンパイまたは複合ターツ同士の選択になった時)にロスが生じてしまう分リャンメンに劣る。逆に言えば、テンパイに遠く孤立牌が多い段階ならリャンメンとほぼ変わらない価値があるとも言える。

同位パーツ同士の比較

リャンメンはテンパイ時の待ちの良さに着目すると、23>34>45、同様に内カンチャンは35>46、外カンチャンは13>24、赤ドラ有りルールで赤5に着目すると、34>45>2346>3524>13になる。基本的に、赤ドラ有りで赤ドラが見えてなければ赤の受け入れ、変化を優先する。複合ターツを単独ターツに固定する場合も同様の方法で比較する。

2.5 牌理原則

  • 手牌の価値の指標は、速度、攻撃力、守備力の三つで事足りる
    一貫性や柔軟性という概念が用いられることもあるが、これらも結局は上の三つのいずれかに該当する。定義がまちまちで誤った評価を下す原因にもなるのでここでは用いない
  • 三つのうち速度が最も重要な指標
    麻雀は罰符を除けば和了によってしか加点できず、一番早く和了に辿り着いた打ち手にしか加点されない。よって和了を目指すうえで速度は常時考慮することになる
  • 速度は守備力を兼ねる
    和了すれば失点することはない。速度が十分にある手なら、速度、攻撃力に差が無い場合に初めて守備力を考慮するくらいでよい。

有効牌の定義と概要

有効牌とは、その牌を引くと手牌の価値が上がり、他の牌が切られるような牌のことである。有効牌には、
(1) シャンテン数を下げる牌
(2) (1)を増やす牌や、打点が上昇する(1)を作る牌
(3) (2)を増やす牌や、守備力を上げる牌
の三つに分けられる、(1)を受け入れ、(2)(3)を変化という。また、それぞれ一次有効牌二次有効牌三次有効牌とも呼ぶ。有効牌としての価値は基本的に (1)>(2)>(3) と考える。

例:ペンチャン一二がある場合、(1)に相当するのは三、(2)に相当するのは一二、(3)に相当するのが四四を引いて外カンチャンになると(2)に相当する牌が 二四五六に増える)である。

速度を表す指標

速度を表す指標には、
(1) シャンテン数
(2) テンパイに近い段階の受け入れ(待ちの良さ)
(3) 目先の受け入れ
の三つに分けられる。基本的に、(1)>(2)>(3) と考える。単純に目先の受け入れを最大にすることが最速ではないことに注意されたい。

有効牌を考慮するうえでの注意点

部分的には有効牌でも、手牌の他のどのパーツより価値が高いパーツにならなければ結局落とすことになり有効牌とは言えない。その為実質的に有効牌が存在しない牌もある。そのような牌は守備力を上げる牌(安牌)と取り替えた方がよい。

例:雀頭があり、面子と外カンチャン以上のパーツが合わせて4つ以上あれば、孤立牌1に123を引いても有効牌とは言えない。

先制テンパイの優位性

テンパイ(役有り)であれば他家の捨て牌を有効牌にする(ロンする)ことができる。これは大きい。よってシャンテン数は重要だが、1シャンテン→テンパイに関しては特に重要になる。

2.6 パーツ比較に入る前に

これからパーツ同士の比較をしていくが、特に断りがなければ以下の条件下で行うものとする。(条件外の場合はまた別個に扱う。)

  • 速度のみを考慮する
    攻撃力、守備力に関しては必ず速度との兼ね合いで考慮することになるので、ひとまず速度のみを考えればよいケースについて押さえていく。
  • メンゼン前提
    鳴いているとパーツの価値は変動する。メンゼンでも鳴きを考慮して打つ場合も同様。
  • 2シャンテン以上
    テンパイすれば、役有りなら他家の捨て牌も有効牌(和了)になり、メンゼンならリーチを掛ける選択ができる。この為、変化があるメリットが無くなったり減少したりすることがある。よってテンパイとその手前の1シャンテンは別個に扱う。(理屈では2シャンテンとそれ以前もまた変わってくるが、基準自体はさほど変わらないのでそのまま扱う。)
  • 他に雀頭が存在する
    雀頭がなければ雀頭のできやすさも考慮することになるのでパーツの価値が変動することがある。雀頭付近のパーツも他の同位のパーツとは価値に差が出てくる。
  • 残りツモが十分にある
    残りツモが少なければテンパイ料を考慮することになるのでまたパーツの価値は変わっていく。
  • 関連牌は全て生牌
    切られている枚数による、または自分で有効牌を切っている(フリテン)ことによる価値の変動も別個に扱う。
  • 不確定要素はランダムとする
    切られている枚数が同じでも河によって山に残っていると期待できる枚数が変わってくる。また、テンパイに近い段階では他家からの出やすさの重要性も増す。

パーツは他のより上位のパーツの影響を受けて受けや変化の質、量が上昇したり、パーツを落として受けや変化を逃してもロスが小さくなる場合がある。前者をコンボ、後者をフォローという。前者によってパーツの価値が上がり、フォローによってパーツの価値が下がる。これによって、同種の同位パーツ内でも優劣が生じ、場合によっては下位パーツが上位パーツを上回ることもある。このようなコンボ、フォローのパターンを把握していき、基本牌理のようなランク付けをより細かく行う。

異種パーツ同士(ペンチャンと孤立牌の5等)は同種パーツと異なり直接比較するのは難しく、手牌の他の部分に影響されるところも大きい。何らかのアプローチで法則を見い出し、同種パーツ同士のような比較ができるようにしていきたい。

今後のパーツ比較の手順

まず単独ターツについて行う。複合ターツのターツ固定同士を比較するうえで単独ターツの知識は必須である。孤立牌は単独ターツや複合ターツを形成するので、単独ターツ、複合ターツの知識、(孤立牌が無い場合の)単独ターツ落としとターツ固定を比較する知識が必要になる。孤立牌同士の比較や孤立牌と他のパーツの比較を一通り行ったら、(完全に把握しきるのは極めて困難なので、ある程度やって新しいパターンが見つかったらその都度比較していく方針で)リーチ判断、待ち選択判断、和了判断について行う。これらは速度と打点や守備力のバランスを知るうえで必要なので、手役、打点、守備力を考慮した手作り、フーロ判断はその後行っていく。

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