適切な実力ルール

前回の内容をふまえて、一般的な現行の日本麻雀ルールをどのように変えていけばより実力差がつくようになるのかを挙げていきます。(トータルの収支差がつきやすく、かつ実力通りの戦績に収束するまでの期間が短くて済む。)

  • 打牌選択要素を制限するようなルールは(ゲームバランスを壊すほどの強力な戦略の出現を防ぐものでない限り)排除する。

ナシナシ、二翻縛りの不採用、喰い替えを認める等がこれにあたります。(一翻縛りは流石にバランス維持の為に必要でしょう、手作りや仕掛けた相手への打点、待ち読みの技術の意味が大きく薄れるというのもあります。)

  • 無駄に半荘を引き伸ばすルールは排除する。

途中流局、西入、流局総連荘(親ノーテンでも連荘)の不採用がこれにあたります。和了連荘、トビ、天井(トップが規定の得点を超えると終了)の採用、中国麻将のように連荘自体を採用しないルールもありかもしれません。

確かに、苦しい点差から連荘を続けたり大物手を和了して大逆転を達成するといかにも実力で勝った気分になれますし、それが麻雀の醍醐味の一つでもあります。しかし、仮に他家より自分のほうが実力で勝るのであれば、収支に大きく影響する順位上昇の目の薄い半荘を長々と続けるより、次の半荘を始めたほうが時間あたりの収支面で得であることは明白です。

打牌に制限時間を設けることも必要でしょう。これは半荘あたりの時間短縮だけでなく、素早く正確に打牌選択を行う技術の差が戦績に影響しやすくする為に重要です。麻雀はそのゲームの性質上、深い読みができることや高度な技術を使えることより、基本的な技術をどれだけ高い精度で用いることができるか(凡ミスをいかに減らすか)の方が戦績に強く影響するのです。牌効率など小学校の算数みたいなものだと揶揄する人もいます。算数も牌効率も、確かに誰でも習得容易な技術です。しかし、我々は算盤の名人に暗算で勝つことは不可能です。例え麻雀の技術が薄っぺらいものであったとしても、その技術をいかに実戦で高い精度で用いることができるかについては、我々はいくらでも鍛錬の余地があるはずです。但し、麻雀は相手の手番に行動する機会がある(鳴き)ゲームなので、将棋と違ってリアルで打つ場合に時間制限を設けることが難しいです。この点もネットで打つことのメリットの一つだと思います。

  • 配牌のランダム性からくる不平等性を緩和する為に手役を増やす。

一発、裏ドラがこの役割を果たしていることは前々回に書きましたが、多様な戦略を否定する問題点もあることも前回書きました。では、一発や裏ドラの代わりに、中国麻将のように手役が豊富なルールにするのはどうでしょうか。

参考文献:「中国麻雀 - Wikipedia

日本麻雀における”手役重視”の戦略が、スピードに劣るハイリスクな戦略になってしまうのは、そもそも手役が少なすぎる為です。手役を増やすことで、手役をみる必要があるので打牌選択の要素が増すがが全体ではよりスピード重視の麻雀になります。メンゼンより喰い仕掛けが有効になる局面が増えることからも打牌選択の要素が増えると言えます。更に言えば、メンゼンより喰い仕掛けが基本になることで、読みの技術の有効性も増します。(メンゼン相手の手牌進行、待ち、打点の不確定性が読みの技術の有効性を薄めていることは読みの技術論でも述べました。)

但し、ほとんど出現しないような手役(大車輪のようなローカル役満を採用しても戦略に影響することはほぼあり得ませんし、難易度に対して異様に高い打点(三カンツのように異様に低いのは戦略に影響しないだけなので可)を設定するとゲームバランスの崩壊を招きます。どのような役を採用し、どの程度の点数をつけるかは非常に難しいところですが、中麻の役で以下の役を採用すると実力差がよりつきやすいゲームになるのではないかと考えます。

  • 三歩高、花竜などの順子系の役、出現率が比較的高く、孤立牌やターツの選択、仕掛け方に関してより考慮すべき要素が増える。
  • 全不靠などの国士無双もどきの役 ほぼ国士を狙うよりなかった悪配牌から和了できる機会が増えることで実力差が出やすくなる。
  • ツモのランダム性からくる、押し引き勝負の結果が偏りすぎる問題を緩和する。

中国麻将は日本麻雀より実力差が出やすいようにも見えますが、一つ大きな問題があります。それは、ツモ和了した場合がロン和了の場合の実質3倍の得点が貰えることです。この為、ツモのランダム性の影響が結果に非常に強い影響を与えてしまうことになります。また、他家からの見逃しという、ハイリスクな戦略が有効になる機会が増えるという面でも戦績が収束しづらくなっていると言えます。

但し、日本麻雀における、放銃者が全額払うルールも、実はこの押し引き勝負の結果が偏りすぎる原因になっているのです。捲り合い勝負をした方がオリるより収支面で有利ならもちろん勝負した方が良くなりますが、その結果放銃となると、オリるという最善でない選択をした場合、更に言えば、そもそも手順ミスで捲り合い勝負にいける手を逃した場合よりもはっきり悪い結果になってしまうのです。現行の日本麻雀において、ハイリスクであるがその選択が最も有効になるケースの最たるものです。

また、大半の局面でベタオリが最善になるというのも実力差の出づらい要因になります。確かにベタオリが出来ている打ち手とそうでない打ち手とでは戦績に大きな差がつくことになりますが、ベタオリ技術は和了に向かう技術よりも遥かに習得することが容易で、一定以上の実力同士では差をつけづらい技術です。状況に応じて多様な戦略を用いることが必要にする為に、現行ルールよりもよりベタオリすべき基準を下げ、捲り合い勝負をよりローリスクなものにすべきではないでしょうか。具体的には、ツモ和了の場合はそのまま点数を和了者に加点、ロン和了の場合は、和了者に加点し、放銃者はその和了点の全部ではなく何割かを失点するという、非ゼロサム(現行ルールと違って卓全体の点数の総和が常に等しくならない)式の得点形式を採用するというものです。(中国麻将は放銃者の一人払いでないにも関わらずゼロサム式であることは日本麻雀と変わらないので、ツモ和了が異常に強いルールになってしまっている。)

これによって、より実力差がつきやすい和了に向かう技術が有効になる機会が増え、(仕掛けが多くなるので打点、待ちが読みやすくなることで)他家のケアをしつつ攻める、安い手に差し込むといった技術の重要性も高まるのではないでしょうか。

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