麻雀におけるプロスペクト理論

質問1
(A)5万円貰える
(B)50%の確率で10万円貰える

質問2
(A)5万円払う
(B)50%の確率で10万円を払う

質問1、2それぞれで、A、Bどちらを選びますか? おそらく多くの人は質問1でA、質問2でBを選択されると思います。5万、10万の部分が50万、100万であれば尚この傾向は強まるでしょう。何故ならば、人間の選択行動には以下のような特徴があるからです。

  • 同額であれば、利益獲得による満足より損失負担による悔しさのほうが大きい。
  • 利得局面ではリスク回避的である、一方で損失局面ではリスク追求的となる。
  • 最終的な結果ではなく、実現する結果が各個人の有する基準点より勝っているか劣っているかが重要。

お金を点棒に置き換えてみれば、まさに麻雀は上で挙げたような選択行動の繰り返しです。日常生活において、特に持ち金の少ない状況であれば、確かに同額の利得によるメリットより、損失によるデメリットの方が大きいものですから、そのように選択をすることは至極当然のことです。しかし、麻雀というゲーム内においてはこのようなことを考慮する必要性はないので、局あたり収支期待値的にはあくまで互角であると認識しなければなりません。

もちろん、ウマやオカがありますので、勝っている時(利得局面)にはよりリスク回避的、負けている時(損失局面)にはよりリスク追求的に打った方が良いことが多いことは事実です。トップのメリットが大きいルールであればトップ重視で打つでしょうし、そうでないルールならばオーラス順位の変わらない和了をすべき局面も増えるでしょう。ルール、点棒状況を考慮した手作り、押し引きを体系化することは困難なことなのです。しかし、だからといって個人の感性や経験則ばかりに頼っていては、人間の持つ性質故どうしてもズレが生じてしまうのです。

それだけでなく、ルールではなく、各個人が有する基準点より勝っているか劣っているかに基づいて選択の判断を行ってしまうという誤りを犯さないようにしなければなりません。この段階から脱却できない打ち手は数多くいます。多くのフリー雀荘では(2着のウマが大きいところでなければ)、オカと場代がある為2着では+になったとしても微々たるものです。その為、雀荘で打つことが多い打ち手はトップ至上主義になりがちです。

出典:たぬ御殿 「第449回「何を切る?」」
ルール:たぬルール(東南戦赤入りアリアリ)
場況:南4局 北家 5巡目 19,000点持ち3着目
(トップ西家33,000点、2着東家30,000点、ラス南家18,000点)
ドラ7
二二二三四五六七227中中 ツモ九 →打九

点棒状況的に上位を捲るよりラス転落の可能性が明らかに高い局面です。よってここでは打九とし、中が出たらポンテンにとって3確でよしとすべきでしょう。運が良ければ7にくっついてもリーヅモタンヤオドラの満ツモ2位、更に運が良ければリーヅモタンヤオドラ3やメンタンピンツモドラドラ等のハネツモもありますが、あくまで基本はラス回避です。マジョリティは打2。得票数からもコメント欄からも、トップ至上主義者が多いことが伺えます。

逆に、上位捲りを目指すべき手牌、局面において、淡白に確和了をしてしまうネット雀士が多いことも事実です。確かに雀荘ではトップ重視、ネットでは平均順位重視(あるいはラス回避重視)なルールが主流です。しかし、必要以上に利得局面でリスク回避的、損失局面でリスク追求的となることや、最終的な結果ではなく、実現する結果が各個人の有する基準点より勝っているか劣っているかで判断しがちになってしまうことで潜在的なミスを積み重ねてしまわぬようにしなければなりません。私にとってもこれは今後の大きな課題です。

参考文献:無気力無関心(仮) 「ギャンブル的側面30

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