大会麻雀の打ち方とゲーム性

大会のような一発勝負と、通常の半荘あたり収支期待値(完全順位制なら順位期待値)の最大化を目指す場合とでは、最善となる打ち方が変わってくるものでしょうか。もちろんこの問いに対する答えはYESです。

しかし、これは何も大会で勝つ為の方法が通常の麻雀と根本から変わってくるというわけではありません。(当然運気の流れに乗るというようなオカルト的なものでも、ここぞというところで気合で勝ちを掴みにいくというような精神論的なものでもない。)勝敗に対する”評価法”が異なるから打ち方が変わるだけなのです。例えば優勝以外無価値な大会の決勝であれば、優勝の評価点を1、他は全て0とし、現在置かれている状況で優勝の確率がx%であれば現時点での評価点はx/100ということになります(具体的な値を求めることは極めて困難ですが)。大会以外の麻雀でもウマオカが変われば打ち方が変わりますし、同じルール内でもリードしていればよりリスク回避的に、負けていればよりリスク追求的になります。大会では打ち方が変わるというのも、本質的にはこれらと何ら変わらないのです。

オーラス 親 ラス目 親満ツモでトップ
一二三四五六(6)(8)123599

これは今年の麻雀最強位戦で見事優勝された張敏賢プロの決勝での手牌です。ここから張氏は役無しドラ無し愚形のテンパイには取らない打(8)、遠くの三色やイッツーまでみた打牌です。結果は数巡後(1)(2)と引いてリーチ、テンパイが入って勝負に出たトップ目から(3)が出て裏1の満貫。このアガリが決め手となり優勝となりました。

この手、半荘あたりの収支期待値だけを考えれば流石に即リーの一手でしょう。(少なくとも、テンパイに取らなかった為に他家に手を進められラスのまま終わる可能性は高くなる。)しかしこれは大会決勝なので、トップ以外は無価値、即ちトップを取れる可能性が最も高くなるように打つのが正着となります。また、同卓者もトップ以外無価値という評価法の下に打っているので、途中で他家にテンパイが入る可能性も大きく下がります。

即リーチとテンパイ取らずどちらがいいのか、私にはよく判りません。ですから、プロの選択を批判することも賞賛することもしません。ただ、上記の理由から通常の半荘よりはテンパイ取らずが優位になることは言えます。

評価法が異なればそれに合わせた麻雀を打つ。もちろんこれ自体は立派な技術であり、実力差の出るところでしょう。しかし、優勝以外無価値というのは言ってみれば評価法として非常に大雑把であり、実力が反映されにくいシステムであると言えます。大会のシステムが実力評価法としては粗末なものであることは今までも述べてきました(まぁじゃんは人生(12)参照)。

大会のような一発勝負では確率など無意味とはよく言われることです。この言葉は一面的には正しいとも言えます。しかしそれが意味するところは残念ながら、”確率を超えた何か”が大会では必要になるということではなく、確率が無意味なものと感じられてしまうくらいに、麻雀という運ゲーが更に運ゲーと化してしまうということなのです。

inserted by FC2 system