誤りと言うと少し語弊があるかもしれません。実際には、現時点では誤りとは言い切れないが、真実でない可能性も十分にあるものも含みます。また、著者自身が、真実ではないかもしれないと言及している場合もあります。
結論が間違っているからこの教えは役に立たない、この本は評価できないとみなされがちですが、そう決めつけるのは早計です。結論部分が間違っていても、そこに到るまでの考え方自体は参考にすべきものや、新たな視点を与えてくれるものもあります。
例:『科学する麻雀(古い方)』は、押し引きの軸を収支0に置いている(実際は引いた場合は確実にマイナスなので、収支期待値がマイナスでも押すべき手もある)という誤りがあるが、押し引きの考え方はまさに参考にすべきである。
例:東2局 南家 5巡目 生牌、2枚切れ (『ネット麻雀・ロジカル戦術入門』より)
ここから打とするのが正着かどうかは判らない(私は役牌が重なればまだあがれるとみて打)が、自分の手が悪い時は他家に鳴いてもらうことで、被ツモ失点を下げるという考え方は従来の絞りという考えに対して新しい視点である。
誤りの教えを鵜呑みにすることは戦績に悪影響を及ぼしかねませんが、うまく取り入れることができれば、単に間違っていないだけの内容が書かれているものより遥かに役に立つといえます。しかし、そのようにうまく取り入れていくことは、相当なセンスが必要になります。麻雀に関する理論がそこそこは理解できるようになった今となっては、古い戦術書を読み返して、中には役に立つ内容が書かれている場合もあることに気付かされることもありますが、初めて読んだ時の私にそれを理解し、実践することは到底不可能なことでした。ですから私は、お勧めの戦術本は何かと聞かれたら、解釈次第ではどのようなものでも役に立つが、そのような計らいを入れないといけない時点で、勧められるものはないと答えます。