テンパイチャンスの理解

次回から(3)、(4)の形についても取りあげていく。今回はその前に押さえておきたいことについて。

牌効率論1でも述べたが、受け入れ枚数1枚あたりの価値は、全体の受け入れが少なければ少ないほど高くなる。愚形ターツが0枚切れと2枚切れでは大差だが、リャンメンターツの0枚切れと2枚切れはそう差はない。テンパイに近い段階での手広さを重視するというのもこの為である。(3)、(4)の形は牌効率論45で述べた通り(1)、(2)の形よりも手広くなりやすい。即ち、(3)、(4)形の手広い1シャンテン形における受け入れ枚数1枚あたりの価値は、(1)(2)形の場合に比べて低くなる。よって、(1)と(2)の比較を行う場合に用いた、余剰牌にどの程度の価値があればこの牌姿からテンパイ枚数を4枚減らせるかという手法とはまた別のアプローチが必要になる。

このことから、テンパイ枚数がかなり広い手であれば、多少受け入れを減らしてもテンパイまでの平均巡目にそこまで差がつかないことから、テンパイ時の待ちの良さを重視するケースが増える。また、同様の理由で、テンパイ枚数にそこまで差がつかないなら打点を重視することも多い。(特に速度重視だと安手濃厚の場合は)直接良形テンパイになる枚数に差があるので、(1)(2)を比較する時のように余剰牌をターツ化させて良形変化を狙う場合よりも良形のなりやすさに差がつきやすい。但し、ドラや手役絡みで愚形でも打点十分(良形重視だと打点面で不利になるなら尚更)の手になるならそこまで良形に拘る必要もない。

打点と速度の選択に関しては、速度重視にすると一方的に(どのようにテンパイしても)打点面で倍近く差がつくような場合なら打点重視がほとんど有利である。何故ならテンパイから手変わりを待つ条件で、中盤で打点が倍になる受けが7種(平均5巡程度でテンパイに復帰する)あれば手変わり待ち有利になるが、1シャンテンの段階で、打点重視の為に受けを狭めても平均テンパイ巡目に5巡も差がつくことはまずないからである。それに対して、速度重視でも高打点になる受けが残る場合や、最低5,200点〜が見込めるようであれば速度重視が有利になることが多い。

また、リャンメンターツや優良孤立牌同士を比較する場合は、比較するものそのものが互いに十分優秀である為に牌姿だけではそれほど優劣差がつかないので、河の状況で優劣が変わることも多いということもこれまでに述べた。同様のことはかなり手広い1シャンテン形にも言える。次回以降このような1シャンテン形からどのようなパターンなら何を切るべきかの考察を行っていくが、実戦では牌姿だけでなく、場に切られている枚数等の河の状況にも対応できるようにしたい。

受け入れ枚数は打牌選択をするうえで極めて重要な判断基準であるが、受け入れ枚数の価値の相対性を理解せずに、”エセデジタル”的な思考に陥りがちな打ち手も、受け入れ枚数やシャンテン数の重要性を理解しない打ち手と同様少なくない。要はバランスなのである。しかし、ただバランスが大事と言うだけで、結局どのあたりに最適点が存在するのかについては考えようとしない打ち手(前記の二者よりも寧ろ多数派であろう)もまた愚かである。どのあたりに最適点が存在するかの解明、それこそが当戦術論の目的である。

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