押し引き論については、『科学する麻雀』を主に参考にしています。当戦術論では、当著の要点をまとめるだけでなく、そこから応用して理解できること、また、実戦で判断が異なってくる為、当著の内容では把握できていない場合についても述べていきたいと考えています。ですので、当戦術論を読まれる前に、『科学する麻雀』(『おしえて!科学する麻雀』の方でも良い)を一度ご購読されることをお勧めします。

絞り

絞りの概念

さて、今まで牌効率について述べていきましたが、当然実戦では、状況によって打牌が変わることもあります。しかし、状況によって打牌が変わらないケースの方が遥かに多いのも事実です。(場に何枚切れか等の問題は、受け入れ枚数という概念によって牌効率の領域で扱うことが可能なので、ここでいう状況には含めないものとします。)

但し、打牌が大きく変化する状況で、非常に頻度が高いので特に重要となるケースが一つあります。それは、誰かがテンパイしている時です。誰もテンパイしていない状況であれば、単に自分の要らない牌を切れば良いのですが、誰かがテンパイしていればそうは行きません。攻めるかオリるかの判断をして、オリるのであれば、相手にとって一番要らない牌を切ることになります(ベタオリ)。

ですから、牌効率とは別に、押し引きという概念について特に扱う必要が出てくるのです。

ここで、誰かがテンパイしている状況での判断を押し引きと述べましたが、誰もテンパイしていない状況でも相手をケアする状況について言われることもあります。その一つに、絞りというものがあります。

絞りとはここでは、自分の手には不要であるが、鳴かれる可能性のある牌を切らないことを指します。主に役牌について使われることが多いですが(鳴かれるケースが多いので)、相手の狙う手役によっては他の牌について言う場合もあります。振り込みをケアして役牌を切らないのは、絞りとは言いません、オリ(もしくは、うまくテンパイした時は勝負するという回し打ち)になります。重ねることを期待して役牌を残すのも、絞りとは言いません。これは和了率や打点の上昇の為に行われるので、牌効率の領域(特に仕掛け関連)です。

絞るべきケース

上記の意味での絞りをすべきケースは、実はほとんどありません。何故なら、不要な牌が複数ある時は、相手にとって有用度の高い牌を先に切るのが原則(牌効率論30参照)だからです。巡目が進むにつれ、鳴かれる可能性もロンされる可能性も上がるからです。鳴かれる可能性が然程高くないのに手を狭めてまで絞るのはナンセンスです。

東場 北家 6巡目 ドラ東
三四(3)(4)(r5)(6)(7)45688東西 →打東

この手はメンゼンならメンタンピン赤がほぼ確定しており満貫以上が見込める手です。仮に東が重なって雀頭を振り替えても、リーチドラ3で満貫どまりです。故にこの東は既に不要牌と言えます。原則通り東を先切りした方が良いでしょう。これがメンピン止まりの手であれば西から切ります。東が重なったときに打点が倍以上になるので、不要牌とは言えないからです。東がドラで無ければ今度は重なっても不要なので東先切りです。結局、自分の手に必要かどうかだけで打牌を決定することができるので、特に状況がなければ絞りという概念自体が不要なのです。

では、鳴かれる可能性が濃厚な場合はどうでしょうか。一色手を狙っている相手に対して字牌や同色の牌を切る、トイトイ狙いの相手に生牌を切る、役牌後付け濃厚の仕掛けをしている相手に役牌を切ると言った場合がこれに当てはまります。

この場合についても、原則絞りを考える必要はありません。何故なら絞った場合、絞られた相手と自分の手の速度が落ちる一方、相対的に残りの二人を有利にしてしまうからです。鳴かせた相手が上がった為に他家の大物手を阻止できる場合もあるのです。ですから、この場合も基本は自分の都合(不要なら切る。もうオリるつもりなら切らない)でいいのです。

これらを総合して、逆に考えれば次のようなことが言えます。

「鳴かれる可能性が高い場合で、残りの二人を有利にしてでも、絞った対象の一人を有利にしたくない時なら、絞りが有効になる。」

以下のようなケースがこの場合に当てはまります。もちろん、上記のように相手の河や仕掛けから鳴かれる可能性が濃厚と判断される牌が不要であるというのが前提です。

  • 仕掛けている相手が大物手であることが明白であるとき(例:ヤオ九牌のドラをポンしている相手に役牌を絞る
  • トップ目等、親の連荘や順位争いしている相手の上がりだけを阻止すればいい時
  • (焼き鳥ルール採用時に)オーラス付近で焼き鳥状態の相手がいる

誰もテンパイしていない状況では相手へのケアをする必要はないという原則を一度押さえた上で、上記のような例外を理解すれば覚えやすいと思います。

inserted by FC2 system