『科学する麻雀』には、裏スジ、跨ぎスジは危険ではないと述べられています。これは従来の待ち読みが如何に妥当なものでないかを強調する為に簡潔な言葉を用いたという面があるので、若干大袈裟で誤解を生む表現でもあります。厳密に言えば「裏スジ、跨ぎスジであるという条件だけでは、その牌が特に危険になるというわけではない」となります。
例えば、の裏スジは−になります。従来の待ち読みでは、序盤でからはを切るから裏スジが危険になるとされてきましたが、単にが孤立していても大抵早い段階で切られます。つまり、からが切られた以外のケースをいくらでも考えることができるので、特に危険とはいえないのです。更にに関しては、が早い段階で切られることで、カンチャンやペンチャン、シャボに当たるケースが減るので、寧ろ危険度は下がっているといえます(もちろん、テンパイの待ちは約65%がリャンメン以上の待ちになっているので、1ランク下がるほど安全になるわけではない)
一方、の裏スジは−、−ですがこれはどうでしょう。今度はです。は面子候補を作る孤立牌として非常に優秀なので、序盤にが切られるケースはあまりありません。その為、序盤でが切られていたら、やから切り出されたという、特定の形になっている可能性が高くなります。ですから、序盤でが切られている場合の・は(無スジ・は元々危険度が高く、が早い段階で切られることでリャンメン以外で当たるケースが減るので危険度はほぼ変わらない)危険度が上がります。これは切りに対するのような、4つ上(下)の裏スジに当てはまります。ですが、精々1ランク弱程度の安全度ダウンに過ぎない(リャンメンが2パターン存在する無スジ・・を超えるほどではない)ので、読みとして利用できるほどではありません。
跨ぎスジに関しては次のようなことが言えます。リーチ宣言牌がである時、−、−はソバテンとされます。しかし、上に述べたのと同様に、は面子候補を作る孤立牌として非常に優秀なので、やの形でなくても残されやすくなります。ソバテンでないパターン(主にくっつき狙いの形)がいくらでも考えられるので、特に危険とは言えないのです。
一方、宣言牌がであれば、−の危険度は上がります。は孤立牌としてあまり価値が高くないので、くっつき狙いで残されたケースは少なくなります。その為、やという特定の形になっている可能性が高くなるのです。(これも、これだけでは1ランク程度の差にしかなりませんが。)
ここで、一つの法則が浮かび上がります。
利用価値の高い孤立牌が(相手は自分にとっては利用価値が低いと思っているから切っているので、厳密に言うと、通常であれば利用価値が高い、即ち〜の浮き牌等)早い段階で切られている、或いは、利用価値の低い孤立牌が後まで残されている場合、特定の形が残っている可能性が高くなるため、特定の牌の危険度が上がる(=手が読みやすくなる)。
利用価値の高いターツ(トイツ)を手出しで落としている場合も読みやすくなると言えます。相手はそれよりも価値の高い(少なくとも同等以上)ターツ(トイツ)を持っていることになるからです。
この法則は逆を考えれば理解しやすいと思います。ヤオ九牌しか切っていない他家がリーチをかけてきた場合、現物が通ること以外には何もわかりません。河にヒントとなるものが全く存在しないからです。つまり、法則で挙げられているものは、この”ヒント”に当たるというわけです。
このヒントが特に存在しない河においては、特定の形を想定する従来の「読み」は役に立ちません。出来ることは、前回上げた危険度表を利用しつつ、通っていないスジの本数から牌の危険度を概算するという、数え上げの読みだけです。(そして、多くのケースはこれだけで対処できる)ですが、特に強いヒントのある河(価値の高い孤立牌→低い孤立牌の順番が特に目立つ河や、かなり利用価値の高いターツが切られている場合、喰い仕掛けの場合はとくにこの影響が強い)であれば、特定の形を想定する読みも有効になり、特に危険度の高い牌を割り出す(それによって他の牌の安全度も上がる)ことが可能になるのです。
しかし、ベタオリをしている時は安全度の高い牌を切っていけば良く、十分な手をこちらもテンパイしていたら多少危険でも攻めるべきなので(安牌がなくてどうしてもオリたい場合や、切り出したい牌が余程危険でもない限り)、このような読みが役に立つのは、押すか引くか微妙な場合にほぼ限られます。