とつげき東北vsプロ雀士 公開リアル対局

2007年10月27日、とつげき東北(以下凸)氏と日本プロ麻雀協会のプロ三名との公開対局が高円寺の雀荘「ミスチョイスQ」で行われました。

対局選手

市川裕樹(日本プロ麻雀協会
三期連続ストレート昇級中の協会期待の若武者。仕掛けを交えた手数の多さが売り。新感覚の和了を創造する打ち手。
鈴木たろう(日本プロ麻雀協会
プロ麻雀界屈指のタイトルコレクター。獲得タイトルは最強位、優駿位、愛翔位、BIG1カップ、日本無双位。緻密な読みと場況を重視した打牌に定評有り。
とつげき東北
科学する麻雀』の著者。言わずと知れたネット麻雀界のカリスマ。その卓越した理論で多くの麻雀ファンのハートをつかんでやまない。
吉田光太(日本プロ麻雀協会
ストリートファイトを得意とする協会のエース。その真摯かつストイックな姿勢は多くの打ち手の共感を集めている。獲得タイトルはオータムチャレンジカップ、野口恭一郎賞。精度の高い攻撃力を武器とする。

会場配布パンフレットより

対局ルール

  • ルール
    • 一発、裏ドラ有り。
    • ウマがトップ者から順に+30pt、+10pt、-10pt、-30pt。
    • 3万点持ちの3万点返しで、オカは無し。テンパイ連荘。
    • 赤牌、箱割れ終了、途中流局、オーラスの親の和了止めは無し。
  • システム
    • 半荘二回戦のトータルで優勝者を決定。
    • 全員が最後まで優勝を目指します。

半荘二回のトータルで優勝者を決め、その後は感想戦という流れでした。結果を先に申し上げますと、優勝は吉田プロ、凸氏は残念ながらドベで終わりましたw。

凸氏は麻雀研究家としては第一人者ですが、最近ではあまり麻雀を打ってないこともある為か、麻雀の実力の方は、プロ(ちゃんと協会側も本当に実力のあるプロを用意してきたようですw)の方が一枚上手だと思わざるを得ない内容でした。

とつげき東北氏の打牌検討

*水色下線はツモ切り牌
立体牌図1

凸氏は打5としましたが、打三としてもロスは三の2枚のみ(3トイツ形ですね)なので、346引きの9枚のソーズの伸びを見る打三の方が良いでしょう。ドラが3なのも大きいですね。46引きは中トイツ落とし。3引きはピンフ不確定なので、中をポンして手広くすることも考慮して北トイツ落としです。実戦では次のツモが三でしたがw。

立体牌図2

凸氏は打6でリーチしとしましたが、既にダマでも出上がり6,400点なので、これは凸理論でもダマが正解です。一回戦でラスだったので高得点が欲しいというのもありますが、それでも打8として一旦ヤミテンに受けるべきです。(8)が1枚切れているとは言え、手変わりが(1)(3)(4)(5)(6)(7)(9)と7種もありますので、リーチはリャンメンに変化してからの方が良いでしょう。

立体牌図3

凸氏は打(3)としてイッツーを確定させました。確かに(3)は残り1枚しかないので直接の受け入れ自体は1枚多いのですがどうでしょうか。上と同様高得点が欲しいので、(6)(9)引きのピンフテンパイよりもドラ引きを考慮、また五八引き時に単騎で即リーチが打てるよう北を残したというのは分かります。ですが、これは打三の方が有力だと思います。これでも四はまだ使えますし、高得点が必要というのであれば、イッツーが確定する受けが1枚多いことよりも、更にピンズを引いたときに六七を落としてピンズの一色手への渡りを残す方が重要だからです。

理想は
(1)(1)(2)(3)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(9)(9) (1)ツモ の8,000-16,000点

次善は
(1)(2)(2)(3)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(8)(8)(9) (1)ツモ の6,000-12,000点

これは流石にできすぎですw。しかし、優勝以外に価値が無い試合で、大トップを取ることが必要条件である以上、このような形も想定すべきでしょう。通常の半荘であっても、イッツーが確定する受けが1枚多いことよりは、ピンズの一色手への変化の方が上ではないでしょうか。

吉田光太プロの打牌検討

次は優勝した吉田プロの打牌の疑問点について。

立体牌図4

吉田プロはピンズで強いターツを作ることを求めて打6としました。しかし、(4)(6)引きの7枚の為に、即テンパイする七6の4枚の受けを消すのは疑問です。(牌効率論 応用編4参照)しかも、喰い仕掛け手なので、七6はポンテンにもとれます。故に、この4枚ロスはそれ以上のロスとなるのです。鳴いた時は浮き牌の価値が下がるのです。更に、打(5)としても三八12引きでより手広いシャンテンとなります(打6とすると三八ツモの変化がなくなる)。ですから、ここは打(5)で間違いないはずですが、何故か感想戦で指摘する人は誰もいませんでした。

立体牌図5

感想戦で吉田プロは、一5で迷って打一としたと言われていましたが、一を残しての三ツモより、5残しての4ツモのほうが明らかに大きいですし、6ツモ時も5残しの方がはっきり有利です。特に迷う理由は見当たりません。

数巡して
立体牌図6

吉田プロは打5としました。裏目が7の2枚だけだからここで打9とすべきを主張している人が居ましたが、わざわざ2シャンテンに戻すことはないでしょう。2枚とはいえ7ツモのロスは非常に痛いですからね。ロスは量だけでなく質も考慮せねばなりません。ここは打5で良いです。

次のツモが6でした。
立体牌図7

吉田プロは打(3)としましたが、ここでは打8の方が良いのではないでしょうか。ピンズが伸びればタンヤオがついて仕掛けも利くので、今度は72枚の受けに対し、(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)引きがより良い変化となるからです。((2)引きでフリテンの可能性が出ますが、必ずフリテンになるわけではないのであまり気にしなくてよい。)

感想戦の感想

プロは実力の面では申し分なく、感想戦での打牌解説も概ね良かったと思います。モンドやGYAO等でのプロの解説、感想戦では呆れてしまう発言がしばしば聞かれますが、今回は観戦しにいくだけの十分な価値があったと感じました。

ただ、やはりプロは、瑣末な部分について考えすぎなのではと感じさせられるところがありました。麻雀で打牌の優劣を決定する要素は実に様々なものがありますが、その中には核心に近い重要なものと、そうでない瑣末まものがあります。より核心に近い要素を優先して打牌に反映させていくのが原則です。

もちろん、細かい部分で優劣が決定するケースも存在します。ですが、それはレアケースです。核心に近い要素だけではっきりと優劣が決定される場合は、細かい部分に関しては考える必要はありません。考えるだけ無駄な労力を使うことになりますし、悪い場合はそのせいで正着を打てなくなることもあります。場況からの山読みや相手の手牌読みに関するプロの発言が多く聞かれましたが、それを考慮することで打牌の優劣が変わるケースは、今回の感想戦の中ではなかったように思われました。

後、会場が雀荘なので仕方がありませんが、観戦者が思いのほか多かったので対局者の手牌を見るのが大変だった上、立ちっぱなしだったので足が疲れてしまいました。感想戦で対局を手作業で再現せねばならなかったので、再現ミスが何度も見られたのも気になったところです。今度はどこかのイベント会場を使って、別室の対局状況をモニターで座って観戦できるようにしていただけると嬉しいですね。牌譜についても、GYAOのロン2カップで行われたようなPCを用いた自動再生システムが欲しいところです。いっそプロのタイトル戦も全部ネットでやってしまった方が色々と便利で良いじゃないかと思ったりもするのでした。

inserted by FC2 system