愚直な麻雀2

(前回の続き)

これまで述べてきた顕在的なミスと潜在的なミスの関係について考えれば、その理由はおのずと浮かび上がります。確かにプロは顕在的なミスは少ないかもしれません。(結果論的なものを含まなければ)顕在的なミスを減らすことは重要ですし、プロはギャラリーに自分の麻雀を見せることになるのですから尚更このことには気を遣わなくてはなりません。しかし、(下手な)プロは顕在的なミス(結果論的なものも含む)を防ぐことばかりに気を取られるあまり、潜在的なミスを積み重ねてしまっているのです。”魅せる麻雀”が勝てる麻雀ではないことと同じことです。

潜在的なミスを改める為には、自分の打ち筋を見直す必要があります。しかし、これは多くの打ち手がやりたがらないことです。特に、麻雀のキャリアが長く、自分なりの打ち筋を確立している打ち手であれば尚更です。”打ち方は人それぞれでいい” ”あくまで自分のスタイルを貫く” 言葉の聞こえはいいですが、まさにこれが雀力の向上を妨げる要因になっているのです。

打ち筋を変えるとしても、どのように変えればいいのかが判らなければいけません。ネットであれば詳細なデータを取ることができるので、上達の為の方法論2で述べたような方法が有効になります。しかし、リアルではこれができません。麻雀打ちとしても、指導者としても非常に優れている人に恵まれでもしなければ、どう打ち筋を変えるかについてはほぼ自分の直感や経験則に頼らざるを得ません。戦績に強く影響するようなミスが多い初心者の段階であれば、打ち筋を変えた方が良い部分が山のようにあるので、直感、経験則の名の下にほとんど適当に打ち方を変えても実力が向上する可能性は高いでしょうが、ある程度のレベルとなればこうはいきません。余程優れた直感の持ち主でなければ、打ち筋を変えることで雀力が向上するかどうかは、ほとんど運のみになってしまい、却って弱くなる恐れも十分に有り得ます。戦績をつけなければ、そもそも打ち筋を変えてうまくいったかどうかさえよく判らないままです。数多く実戦をこなして場に慣れるだけでも、顕在的なミスは減らしていけます。しかし、こと潜在的なレベルになると、実戦だけではどうしようもないことが多いのです。

プロの対局において顕在的なミスが少ない理由はもう一つあります。それは、打ち手全員が顕在的なミスだけを避けるような打ち方(まぁじゃんは人生(25)で挙げたような、いわゆる”魅せる麻雀”)を心がけていると、結果的に顕在的なミスをしにくい場になるのです。前回挙げた手牌の関連牌の見落としや、押し引き判断やベタオリミスといった顕在的なミスは、他家のリーチや仕掛けが頻繁に起こる、動きの多い場の方が起こりやすくなります。まぁじゃんは人生(25)で挙げたように、”魅せる麻雀”では手作りが遅く、リーチや仕掛けの頻度も少なくなります。これが、一見ミスが少ないように見える原因なのです。そして逆に言えば、顕在的なミスが結構目立つネット最上卓が見た目よりレベルが高い理由でもあるのです。全体的に最上卓は手作りが非常に早く、積極的にリーチや仕掛けを行ってくる打ち手が多いものです。複数の仕掛けに対処しつつ手を作っていくのはなかなか困難なことであり、オリるとしても楽ではありません。迷った結果顕在的なミスをしてしまうこともどうしても増えてしまいます。逆に言えば、このような”魅せる麻雀”とは程遠い、”愚直な麻雀”は、相手のミスを誘発しやすいという(このメリット自体は取り立てて言うほど大きなものではないとは思いますが)”潜在的な”メリットがあるという強みもあるのです。

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