第四章 「恋人」

「麻雀界の改革」―我々雀Key会が打ち立てた、実にくだらなくて壮大な目標である。どれ程の事が出来るかさえ、まだ判らない。そんな雀Key会の行く末や如何に…

出来ることがあれば何でもいいからやろう。そういうことで、このブログを綴ることにした。麻雀というゲームの本質について、今の麻雀界の現状について、少しでも多くの人に知ってもらう為に。

私「んー、どうしたものか。」

どら「何だ、ブログのネタ作りで困っているのか。」

ここは私の自宅。どらは今日メンバー業が休みなので遊びに来ている。今は寝転がって漫画を読んでいるようだ。当の私はPCの前でにらめっこである。

私「うむ。書くネタ自体には困らないんだが、問題はその書き方なんだ。正しいことを、ただそのまま書けば良いってもんでもないんだ。」

ど「どういうことだ。」

私「例えば、従来プロが言っていたこの戦術は誤りであった。本当はこうするのが正しいと述べてその理由を説明することは難しいことではない。だが、どんな競技でも大半は初心者。それが本当に正しいのかどうか、読み手は判断する術を持っていないわけだ。」

ど「だから報道は正確さより、視聴者の関心を引くことが重視されるってやつだな。」

私「そう、そしてそれがまさに、今の麻雀界の問題の原因でもある。プロ信仰や流れ論信仰なんかがそうだ。解決していくには、正しいことを述べつつも、従来の麻雀関連の記事よりよっぽど面白いと読者に思わせるような内容を含んでいかなければならないわけだ。」

ど「難しいな。」

私「うむ。だからお前も何か面白いことがあったら教えてくれ。」

再びPCの方に顔を向けなおしてにらめっこ再開。んんー。良いアイデアがどうしても思いつかない。ちと息抜きでハソゲームの麻雀でもやろう。ネタとして使えそうな局面が出てくるかもしれない。…3着、ラス、ラス。つかん。しかもラスの局はぶっ飛びかつ焼き鳥。あがったのは最初の半荘の親のバカ混3900だけである。しかも他の色のを2枚も切っているというお粗末振りだ。…お、だけどこれはネタに使えるかもしれない。丁度ドラを使うのが上手いから故どら自慢と呼ばれる男も居る。何か面白い話が聞けるかもしれない。

私「ちょっと質問ができた。」

ど「お、何だ。」

私「五(6)256999南南北北白發 親 ソーズの染め狙いで五あたりから切るよな。」

ど「勿論。」

私「仮に打ち手がドラを聴牌まで切らない雀鬼流だとして、シャンテンの時にこうなったらどうするんだ? r五(r5)2256999北北 南南曲南ポン。」

ど「ああ、そりゃ当然ドラは切れない、まあそれはまだ456か567の三色かトイトイがあるけどな。そういやこの前幕張であった麻雀格闘倶楽部のイベントで元雀鬼会の死神ことI藤プロが同じことやってた。マンズのホンイツに向かってたところに(r5)引いた。当然これは切れない。そしたら次のツモがr5だ。」

私「まさか。。」

ど「勿論その局はアガリ放棄というわけだ。」

私「わっはっは。勝手に決めた決まりで自分の首絞めてやんの。しかも魅せる麻雀どころか、見苦しくて見せられない麻雀じゃないか。大体ドラは恋人だから聴牌まで切らないとかいい加減過ぎw」

ど「ま、雀鬼会ルールは(r5)2枚だけだから、そういう展開にはほとんどならないわけだがな。後、カンは聴牌までやってはいけないのも、責任が取れないとかなんとか言ってるけど、要はこういう展開が起こりにくくする為なんだな恐らく。ちなみに国士の1シャンテンで残り2枚がドラな時はドラを切ってもいいらしい。」

私「そりゃ初耳だ。桜井章一も案外合理主義者なんだな。いきなり恋人が増えたりしたら大変だもんなw」

ど「でも俺も、ドラは恋人だと思ってるぜ!」

私「ほう。じゃあお前のドラに対する想いを是非聞かせてくれ。ブログのネタになりそうだ。」

ど「おう。」

どらは漫画を読むのをやめ、起き上がって近くの椅子に腰掛けた。そして話を続けた。

「まあ恋人というよりは、恋人候補ってとこだな。だから複数いても問題じゃない。ドラは美人でスタイルも抜群で性格も良い、皆のアイドル的存在だ。一方表ドラは癖がある。時にはとっつきにくくて、敬遠されることもある。字牌ドラなんかはまさにそうだな。」

「でも世の中には変わり者も居て、美人のドラには興味がないのに字牌ドラにぞっこんな奴も居る。他色のホンイツやチャンタがそうだ。逆にタンヤオは面食いだから赤にしか興味がない。七対は誰でもOKだが、恋愛に関しては奥手といった感じだな。」

「自分の手牌は、まさに自分自身なわけだ。つまり例のプロは、自分とは明らかに相性の合わない相手だったにも関わらず、下手にとらわれすぎた為に身を滅ぼした哀れな男ってわけだ。大体ドラを恋人のように大事に扱えというのは、ただ切らずに抱えておけってことなわけがない。相性が合わないけれど、一応付き合っているからという理由で放置していて良い訳がない。相手にすればいい迷惑だ。それくらいなら、いっそ別れてしまったほうが良い。」

私「おお。ドラは恋人だなんて適当な言葉だなと思っていたけど、そう解釈してみるとなかなか面白いな。続けてくれ。」

ど「おう。では次は、恋人候補と結ばれる為の方法だ。」

「方法は大きく分けて二つある。まず一つ目は、想いを寄せて、いつでも傍にいてあげられるようにすることだ。傍、つまり、ドラ傍の牌を大事にせよということだ。付き合っていくのなら、相手の気持ちを受け止められなくてはならないわけだからな。ドラ含みで面子が出来たのであれば、晴れて二人は恋仲になれたというわけ。ドラとドラ傍でくっついて仲を確かめ合ったということ。おっと、こう考えると結構麻雀ってエロいゲームだなw」

私「中張牌だとくっつきやすくて字牌とはくっつきにくいという点からもその例えは的を射ているw誰でも美人とくっつくのが嬉しいだろうしな。」

「だがこれだけではまだ結ばれるとこまではいかない。現実でも互いが惹かれあってるだけじゃ結婚できないしな。結婚はつまりアガることだ。麻雀でアガる為には役が必要だ。ドラだけではアガれない。役。それは言ってみれば二人がこれから暮らしていく家というわけだ。」

「役をつけるには門前でリーチが手っ取り早い、早い手である、つまり、環境が恵まれていて経済力がある状態なら、すぐにでも新居を建てることができる。だけど、現実は厳しい。環境も悪ければ金もない場合もある。そんな時は、何とかして二人が住むのにふさわしい住居を探し(=狙える手役を考慮する)、お金を何とかして調達(=他家から鳴く)しなければならない。その結果が鳴きまくった安手だっていい。それが二人の愛の結晶なんだからな。」

私「良い話だ。不覚にも感動してしまったじゃないかw よし。それ使わせてもらう。本当ありがとな」

ど「どうもどうも。こんなこと考えても麻雀には役に立たないけど、結構面白いもんだぜ。」

ふう。私は三度PCの方を向き直した。ブログのネタができたついでにもう1戦打つか。

…ところが今回も展開が悪い。しかも東四局に、対面にこんな酷い手の親被りを食らう。

三四r五(3)(3)(3)(3)(4)(4)(5)34r5 (r5)ツモ ドラ(3)

タンピンツモ三色イーペー表表表表赤赤赤 8,000−16,000

ダマの平和系で数えなんて初めて見た。何だこれは。ドラを全部使い切っているではないか。結婚相手は一人だけではなかったのか。何たるハーレム。何たる女たらし。許せない。こんなのが許されてなるものか…!

いくら嘆いても点棒は戻ってこない。対面は大富豪の息子で、尚且つ絶世のイケメンで女を口説くのも上手い。だからこんな不徳な行為も許されるのだ。金も甲斐性もない男と結婚するより、この男の愛人になる方が幸せと判断されても仕方がない。ああ、人生も麻雀もなんて不平等なんだろう。。流れ論もネット麻雀特有の偏りの存在も信じない私であるが、今回ばかりは麻雀の神様を恨みたくなった。

そしてオーラス。何とか飛ばずに済んだがラスのままである。

 私 5,800
上家 14,500
対面 69,400
下家 10,300

ラス親である。最低でもラスは免れたい。3着浮上でも次局他家ツモによる親被りラスの危険があれば3着やめの予定。3巡目に次のようになった。

三五七(2)(3)(5)(6)134689 ツモ西 ドラ西

ドラを引いたが使いにくい西。さてどうしよう。この手からいきなり切り飛ばすわけにもいかない。取りあえず打9だろうか。門前か喰いタン。何はともあれとりあえず連荘。普通ならそう考えるところだろうか。

然しまだ序盤とはいえ一面子もできてない。門前では厳しそうだ、かといって喰いタンのみを上がって連荘してもラスのままなのは変わらない。現状は厳しい。そんな所に舞い降りてきたドラの西。…もうこれが最後のチャンスなのかもしれない。

「一応付き合っているからといって、ただ放置していて良い訳がない。」

さっきの言葉が脳裏に浮かんだ。想いを寄せる相手と結ばれたければ、困難に耐えて何でもするつもりでなければいけない。…そうだ。二人の暮らす家を建てよう。

迷った末、私は七を切った。何としてでもドラを使い切る。本線はソーズの一通、複線で123、345の三色、ソーズの混一。いずれにせよ厳しい。見苦しい仕掛けをすることになるだろう。自称魅せる麻雀打ちからすれば実に醜いものであろう。だがこれでいい。死に際に潔く散る美学など、麻雀には不要だから。

上家も自分がアガらないと捲くられる公算が高い為にまっすぐ来ている。その為運良くこちらの必要牌を鳴くことが出来た。

三フーロ。ついに聴牌に漕ぎ付けた。そこに下家からリーチが掛かる。もう戻ることはできない。後は、運命の女神がこちらを振り返って微笑んでくれるのを祈るしかない。

「俺は器量もなければ金もない、カッコ悪い男だ。でもお前の傍にいることだけはできる…約束する。お前のことが好きみたいだから…。良ければ、何もないところだけど、この部屋で、ずっと一緒に暮らして欲しい…」

次のツモ、画面に映ったのは西の文字だった。想いを寄せる人が振り向いてくれた。その顔は笑っていた。

ツモ!2000オ−ル!
123西 ツモ西 曲546チー 曲(4)(2)(3)チー 曲789チー

リーチ棒が出たのでこれで捲くり2着。苦難を乗り越えて得た幸せはささやかだけど大きい。

ど「ほう、捲くりよったか。」

私「はは。ちょっと無理してしまったな。」

ど「これこそ、魅せる麻雀って奴だな。」

私「ああ。そうだな。」

 

今週の雀Key会語録「やっぱりドラは恋人」

※例の如くこの話はフィクションだけどプロの話は事実です。これは信念だから仕方ないとしても他にプロがヘボミスや謎解説やりまくっていて私笑い堪えるの大変だったあるね。

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